多世代共生エコビレッジの旅 第4話|ユルレポ海外

den_title_3.jpg

第四話「子どものための余白」

株式会社グラディエ 代表取締役 磯村 歩


 多世代が一緒に暮らしているエコビレッジ「スヴァンホルム」では、暖かくなってくると屋外で夕食をとります。そして夕食が終わるやいなや子供たちは一斉に遊びだします。トランポリンが彼らの定番で、数人がごちゃごちゃになってはしゃいでします。両親は食後のワインを楽しみながら、時折子供たちに「気をつけて遊びなさいよー」と声をかけています。あるいは乳母車を傍らに母親同士、父親同士が育児の悩み事を相談し合っています。おばあちゃんやおじいちゃんが両親に代わり小さな子供の世話をしていたり、一人暮らしのおばあちゃんが暇をもて遊んでか子供たちをからかっていたり。年頃の子供たちは、端のテーブルを陣取ってなにやらコソコソと悪巧みを考えている様子。話疲れた大人たちは、ゆったりと遊ぶ子どもたちを眺めています。住民の何人かは、海外から来たゲストワーカーに「なぜここに来たんだ?」「仕事は?」「ここをどう思う?」と質問攻めに。大きな家族が賑やかに食事をしています。

と、そんなときに、ふとこの歌が頭をよぎります。

「I hear babies cry. I watch them grow. I know they'll learn much more than I'll ever know. And I think to myself what a wonderful world」
(作詞作曲: George David Weiss - G. Douglass「What a wonderful world」から引用)

den_04_03.jpg

 歌の世界だけだと思っていたけれども、本当にあったんだ”"What a wonderful world”と。周囲に子供がいると本当に平和な気分にさせられます。多世代が共に暮らすことの大きな意義でしょう。因にここは公園デビューする必要がありません。自然に囲まれていて”公園の中に家があるみたい”なものだから。小さな子供を育てている若い夫婦が住みたがるのもよくわかります。今回は「スヴァンホルム」で子供たちがどんな遊びをしているのかを紹介しましょう。

den_04_04.png

 池の前には「ドクロマーク」が掲げられていますが(左上)ここは子供たちが侵略した領地だということを表しています。ときおり子どもたちはインディアンなみに流浪の旅に出ます(右上)テントの中は、彼らだけの世界。リクライニングのきいたデッキチェアは彼らしか使えない専用品です。子ども専用の小さなフットボール場(左下)もあります。ときおり年長の子どもたちも交じって楽しんでいます。昔はこんな年代を超えての遊びがいっぱいあったように思います。トランポリン(右下)は跳ねて飛びあがるだけじゃありません。ふわふわした触感はリラックスするのにちょうどいいらしい。子どもたちにとっては本を読んだり、昼寝をしたり、屋外にある大きなベットみたいなもの。

den_04_05.png

 山がそのまま”滑り台”って、なんか贅沢(左上)食事のテーブルだって彼ら専用のものが用意されています(左下)ちょっと大人びた子供は、親から離れ、子どもたちだけでここを陣取って食事を楽しみます。自分たちの領地を守るためには見張り台(右)だって必要。うっそうとした茂みの奥には、領地を見渡せる子ども専用の見張り台があります。

den_04_07.jpg

 コモンスペースの裏側には動物愛護精神?にのっとり猫専用のホテル(上)が完備されています。1泊16€だけれども、寛大な彼らはついついお金を取りそびれてしまう。ホテルには小さなプールも併設されていました。

den_04_06.png

 仲のいい友達とは向かい合って座りたいもの(左上)そうすれば会話だって弾むはずです。遊びながらでも仕事を忘れない子どもたちは、トラクターのアーム部分にモップを取り付けました(右上)ただ少し気まぐれ過ぎて、”ただ散らかしているだけ”というウワサも。車なのか、オートバイなのか、いやいずれでもない。彼らが見出した新しい乗り物(左下)は、どこからでも乗降できるフレキシブルなもの。そして、広い原っぱは絶好のお昼ね場所(右下)

「スヴァンホルム」には自然が残る広大な敷地の中に、様々な遊び場があります。でもそのいずれも住民や子どもたち自身で手作りしたり、古いものを活用したりしています。あらかじめ”用意された空間”ではなく、ちょうど良い具体の”余白”が子供たちの創造力を掻き立て、遊び自体を作り上げていってるんじゃないかと思います。決められたものなんてきっとつまらない。

LinkIcon次のページ

ユルレポボタン。クルーが訪問した住宅、施設、コミュニティのレポート
ユルレポ海外のボタン。海外の住居、コミュニティのレポート
ユルツナ大学のボタン。日本の住居、コミュニティを訪問する見学会の案内
ユルツナ実録のボタン。ユルツナクルーが実際にどうやってゆるいつながりの暮らしを作り上げていくかのレポート
ユルツナ見学会のボタン。日本の住居、コミュニティを訪問する見学会の案内


No1.png

No2.jpg

No3.jpg

No4.jpg