第六話「究極の自己満足」
株式会社グラディエ 代表取締役 磯村 歩
私たちの生活は家族単位から地球全体にまで至る相互依存の集積で成立しています。サステイナブルライフを謳うこのコミュニティも、その類から免れません。確かに食料、エネルギーを自給自足(下写真:スヴァンフォルム所有の風力発電)するなど地球環境に配慮した典型的ライフスタイルですが、自動車及び燃料、電化製品、各種サニタリー、各種設備機器などの使用及びその製造工程を仔細にみれば、他者依存の構図と、更には様々な負の側面もでてきます。
ハイブリッドカーも、確かに燃費は以前と比べ改善されたとはいえ、EPT(参照:環境エネルギーの投資回収)にまで目を向ければ、その製品の選択が妥当であるかどうかは怪しくなってきます。そもそも環境負荷は指標によって異なり、妥当性の担保はなかなか難しい。
さて、私の実家は、子供の服をリサイクル品に拘ってよく探しまわっていました。近隣で購入すれば安くて手間もかからないのに、です。実家の母親がモノを捨てられずに私が住む東京にいろいろなモノを送ってきます。私が使うかどうか極めて怪しいのに、です。いずれもそのプロセスにおける郵送費、移動費などのCO2排出を考えれば、どちらが地球に優しいなんて分かったもんじゃありません。ただ最後に「あースッキリした」といいたいがため。それはサステイナブルに対する使命感ではなく、自己満足に近い衝動で動いているのです。「あーイイことした」という自己満足。スヴァンホルムは、自分たちがコミュニティを作る動機について以下のように述べています。
「The basis was formed by common ideals concerning ecology, income-sharing, communal living and, finally, "selvforvaltning". This Danish word is hard to translate to English. It's rooted in modern Danish culture, and is used in the development of educational and management ideas. It represents the idea of stimulating people, pupils, and workers to be more involved in decision-making and feel responsible for the outcome. "Self-government" is the English word we thought would be the closest.」
出典元:SVANHOLM "Why we are together?"
エコ生活、収入の共有、共同生活、そして最後に”自治(Self Government)”であると謳っています。しかし、なぜ自分たちで自治をする必要があるのでしょうか? 共同体による扶助が必要であれば、それを担うべき地方自治体に問えば良いではないですか。同一地域内で自治機能が重層化するのは非効率なはずです。そしてその自治に対する知識の分散化は、他者の不幸でもあります。ここに究極の自己満足がみてとれると思うのです。
サイト上でも述べられているように、デンマークの文化に”自己決定”と”自己責任”の理念が教育、社会に根付いているのが一つの背景にあるのでしょう。自己決定を満足させるためには、決定した結果が自分に還元されなければならない。自己責任を体現するためには、責任の所在に透明性が担保されなければならない。そのための方法論として、小規模の共同体がありうるわけです。依って、このコミュニティは、彼らの自己決定と自己責任を体現するための自己満足のフレームなのです。この共同体を選んだ目的としてサステイナブルライフなど耳障りのいいキーワードが述べられますが、実はそれは自己満足のはけぐちの一つなのかもしれない。
「究極の自己満足をしよう!」それがサステイナブルに繋がるのであれば、極めて合理的ではないですか。そして、私にはこちらの方がなぜかスッキリするのであります。