都市環境研究所 田島寛子さん|ユルツナ大学

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自分たちで考える自分たちの暮らし
株式会社都市環境研究所 田島寛子さん

ユルツナサイト制作作業をしている編集長の磯村舞

株式会社都市環境研究所 田島寛子さんは民間の都市計画コンサルタントという立場から、地域コミュニティとつながりを持ちながらお仕事を進めています。そしてプライベートでも地域との関わりを持ちながら、暮らしやすい環境づくりに携わっています。地域コミュニティとはどうあるべきか?そして私たち自身は地域でどう暮らしていくべきなのか?いろいろな気づきを与えてくださる素晴らしいインタビューとなりました。では、田島さんの授業はじまりです。

Q:まずは田島さんのお仕事をご説明頂けますか?

 民間の都市計画コンサルタントをしています。土木系コンサルタントやゼネコン、建築設計事務所が、都市計画のコンサルタント業務を行う場合がありますが、弊社は、都市計画を専門とするプランナーの集団であることが特徴です。研究スタッフは、50名程おり、東京の他に三重と九州に地域事務所があります。1970年に設立し、昨年40周年を迎えました。

 事務所の主な業務は、大きく三つです。一つ目が「都市計画」。自治体等から依頼を受け都市の施設配置や土地の利用のしかた、景観等の計画策定やまちづくり条例等の制定、防災やユニバーサルデザイン、農山村等の様々なテーマ型の計画策定等に取り組んでいます。二つ目が都市の中心部の「再開発事業」です。市街地再開発事業を中心に都市の再構築のため、既成市街地等での権利調整や事業計画等に取り組んでいます。三つめが「都市デザイン」です。大規模な開発のデザイン調整、パブリックスペースのデザイン等に取り組んでいます。私はこの中の「都市計画」に関わるグループに所属しています。

 これまでは、地区のまちづくりを支援する条例の制定、既成の住宅地での地区計画案の策定、温泉地での屋外広告物現状調査および条例の制定、温泉街の街並みルールの策定、ユニバーサルデザイン関連の調査等を担当してきました。

Q:地域に関わるお仕事ですので、地域の方々との接点もあるのですよね?

田島さんの横顔 プランナー、コーディネータ、ファシリテーター等の立場で計画書の作成、行政と住民間の調整やワークショップの企画・運営等を行います。その中で地域コミュニティとの接点がある業務は、いくつかあります。例えば、長野県にある温泉地では、旅館や土産物店等を営む地域の方々と共に温泉地らしい景観づくりを行うためメインストリートの街並みルールを検討しました。長い歳月のかかる街並みづくりには、やはり住民自身に何が問題なのか気がついてもらうことが重要です。そのため、自分たちのまちや街並みに対する関心を高めて共通の価値観を作り上げるため、住民の方々と一緒にまちを歩き、ワークショップを行い、それを踏まえてルール案を提示し、意見集約をしていきました。ルール案の提示の際には、いくつかの建物について看板のデザインや外壁の色、格子を設ける等の従前・従後の違いを絵で描き、具体的にお見せしながら意見交換を進めました。地図を持ち、グループで街並みをチェックし、自分自身で課題に気がつく。とても基本的な方法ですが、気づきには欠かせません。これらの気づきがあることで、実際にルール案を検討する段階で意見が言いやすくなり、議論が活発になります。

 また、東京都のユニバーサルデザインのモデル地域に選定されたある地域の調査では、高齢者、障がい者や小学生、他地域に居住しその地域を利用する方等と特定の地域について複数の検討を行いました。ワークショップやまちあるき、小学生向けのユニバーサルデザイン体験教室等を通じ、地域の課題や解決のアイデア等を出して頂きました。その結果として皆で、「外出しやすいまち情報マップ」をつくりました。高齢者、障がい者、小さな子ども連れの方などが利用しやすいお店や施設の情報、散策ルート等が載った地図です。この地図作成のコーディネートを行なったのですが、それらを通じ、既成市街地でも様々な工夫と人の知恵が集まれば暮らしやすくすることが出来ると実感しました。

Q:まちづくりという目的に対して、どのように業務を進めていますか?

 様々なテーマの業務がありますが、最初に現況調査をしっかりやります。地形、歴史・文化、自然環境、観光等の取り組みを把握した上で、計画を策定すべきか、具体の事業を行うべきか、地域で新しい活動を生み出すべきか、そもそも私たちが何を仕掛けるべきか等、まずは、地域の現状を踏まえて幅広く考える事が必要だと思います。その上で、適切なアウトプットの検討を行います。業務によっては、はじめからアウトプットが決まっているものも少なくありませんが、一度は、鳥の目・虫の目でそこに関わる問題を捉えることが大切だと考えています。

Q:地域の方々との対話の中で、ご苦労されている点はありますか?

 地域の方々の思いを受け止めながら、無理のないよう段階を追って検討を進めることを大切にしています。例えば既成の住宅地において、地区計画を策定する時ですね。地区計画は、地域の方々が、その住宅地の景観の美しさや現在の住み良い環境を維持したいと思った際に、現在定められているルールを厳しくすることができるものです。このルールは、個人の自由をある意味制限することにもなります。ルールの内容としては、店舗等の建物用途の制限や建物の高さの制限、またブロッグ塀ではなく見通しの良い柵にするといったことが挙げられます。時間をかけて、地域の方々の理解度を見ながら、どのようなルールを定めることがこの地区にとって最適かどうかを考えながら、案の検討を行います。最初は、地区計画を推進する検討委員会の方々と提示する案を詰め、アンケートや住民説明会を行い、状況を見極めながらその都度適切な方法を選択し、地域の方々に案を提示していきます。アンケートでは、はじめに地区計画の策定を行うこと自体について、そして次にその内容について、最後には地区計画の内容に対する承諾のため署名を頂く等、少しずつ理解を頂けるようなプロセスをとっていきます。

 コミュニティの状況は地域によって様々ですが、やはりコミュニティがしっかりしている方が検討は進めやすいですね。長野県の温泉地の場合は、役場が声をかけた委員と共に検討を行いましたが、集まった方々は地域とのつながりの強い人達でした。また、住宅地の場合は、自治会内に設けられた検討委員会の委員と検討を行いました。

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Q:地域の問題に外部から人が来ることに対して、地域の方々の抵抗感もあるように思いますが?

 私達は、外部者としての立場をむしろ利用して地域に入ります。地域コミュニティのメンバー間では、すでに人間関係が出来上がってしまっており、なかなか反対意見を言いにくい場面もあるように思います。外部の者だからこそ客観的に言えることがあります。場合によっては、そういう客観視できる私たちの立場を利用して頂くこともあります。そして、極力はじめの段階で関係する多くの方々との対話を持つようにしています。普通の会議の仕方では、どうしてもその地域において発言力の強い人に意見が偏ってしまいがちです。そこで、多くの方が参加し、それぞれが意見を言っていただけるようなワークショップを開催したり、一緒にまちあるきをして課題を共有したり、新しいメンバーを入れるためにイベントを開催する必要性があることを伝え、実行する。外部者として様々なきっかけづくりを行うようにしています。参加者から意見を引き出すためには、検討の内容を理解して頂くことが大切です。そのため議論の内容や素材を可視化するため、模造紙に意見を書き起こしながら会議を進めたり、データを図化したものをお見せしながら議論を進めていきます。これらを通じ、参加者自身が、自分の意見がきちんと受け取られている事を確認できる、複雑な情報をすっと理解できるような状況をつくりだすことが大切なのです。


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