Q:高齢者にとって地域に役割があるのは、いきがいにも繋がるように思います。
高齢者の方々には貸主さんになっていただいてもいいですし、ご自身の趣味の陶芸作品を週末だけカフェの一角を借りて販売されてもいいですし、年齢に関わらず、誰でも好きな時に好きなことをすぐに始められるサービスにしていきたいですね。
こうした個人のニーズもきちんと掘り起こしていきたいと考えています。利用者さんの中にはテレビ番組や映画のロケをされる方、屋上でスチール写真を撮られる方、モデルハウスで撮影をされる方がいらっしゃいますが、通常のレンタルスペースに比べ安価で便利だと評価頂いております。またセミナー、勉強会、お友達の誕生日パーティーで活用してらっしゃる方もいます。
あともうひとつこれから力を入れていこうと思っているのが駐車場なんです。例えば、サッカーのようなイベントがあると会場近くのコインパーキングはすぐ一杯になってしまいますよね。その時、会場の近くにお住まいの方の駐車場を一時貸し出してはどうかと考えています。また銀行、証券会社、郵便局などの駐車場で休日社員が使っていないようなところも予約ができるような仕組みも広げていきたいと思っています。
Q:では最後に西浦さんご自身が理想とする暮らしは?
軒先を始めたときのきっかけと似ているんですけど、やっぱり自分の年齢とかその時の状況や環境とかに縛られることなくそのときにやりたいことをやれる暮らしがいいですね。例えば私が60歳や70歳になったら子ども向けのプラモデル屋をやりたいなと思っているんですが、そういう風に、やりたい時にやりたいことを精神的にも構造的にも縛られることなく自由にできたらいいなぁと思います。
本日はどうもありがとうございました。
最後に西浦さんは「私自身、今に至るまでそうだったように、最初の一歩を誰もが気軽に踏み出せるような暮らしのお手伝いがしたい」とおっしゃられましたが、育児しながら働く難しさを感じていらっしゃるからこそのように思います。私たちは、誰しも今の暮らしに窮屈さを感じているのかもしれません。特に女性にとって、まだまだ育児と仕事の二者択一を迫られる状況が色濃く残っているように思います。それを軒先というスキマから、誰もが気軽に活動をはじめられるプラットフォームを築いていらっしゃる。ひょっとして西浦さんは、軒先を通じて日本の働き方自体を変えようとしていらっしゃるのかもしれません。
2012.3 編集・取材 イソム、マイ
起筆 イズ、ヨシコ、ユカ
西浦 明子
軒先株式会社 代表取締役
神奈川県生まれ。上智大学外国語学部卒業後1991年ソニー(株)入社。海外営業部に所属。1994年ソニーチリに駐在、オーディオ製品などのマーケティングを担当。2000年、同社を退社後帰国。創業時のAll About Japanで広告営業を経たのち、2001年(株)ソニー・コンピュータエンタテインメント入社。商品企画部にてプレイステーション2やPSPのローカライズ、商品開発などを担当。2006年同社を退社後、(財)日本国際協力システムで政府開発援助(ODA)関連の仕事に携わる。2007年、出産を機に同財団を退団。約半年の構想準備期間を経て、2008年4月に軒先.comを立ち上げる。